
「ネットで直接売ってみたいけど、何から始めればいいのか」
福井県内の生産者さまから、こうしたご相談が増えています。市場出荷や直売所だけに頼る形から、自分で値段をつけて売る形へ。動機はだいたい共通しています。
ただ、いきなりネットショップを作るのはおすすめしません。順番があります。
段階を3つに分けて考える
- 今のお客様に直送する:直売所や口コミで買ってくださっている方に、電話やLINEで注文を受けて発送する。ここで発送作業の実際が分かります
- 既存のプラットフォームに出す:産直サイトやふるさと納税。集客を任せられる代わりに手数料がかかります
- 自社のネットショップを持つ:手数料は減りますが、集客を自分でやることになります
3から始める方が多いのですが、つまずきやすいのもここです。集客の当てがないまま箱を作っても、注文は来ません。1と2で「売れる形」と「送れる体制」を確かめてから3に進むほうが、結果的に早く回り始めます。
サイトより先に決めることがあります
ネット直販でつまずくのは、ほぼ運用側です。作る前に、この5つを紙に書き出してください。
- 送料:クール便か常温か。地域別にいくらか。送料込みの価格にするか
- 箱と梱包材:仕入先と単価。届くまで潰れない形か
- 発送できる曜日と時間:収穫と農作業の合間に、どう組み込むか
- 傷んで届いたときの対応:返金か再送か。誰が判断するか
- 1件あたりの手取り:送料と資材と手数料を引いて、いくら残るか
特に最後の計算は、始める前にやってください。手間の割に残らないと分かれば、単価を上げるか、まとめ買いの形にするか、設計を変えられます。走り出してからでは変えにくいです。
旬が短いものは、予約販売で
福井の農産物には、出せる期間が短いものが多いです。上庄の里芋、越前水仙、若狭の梅、夏のスイカ。収穫が始まってから売り始めると、告知している間に終わってしまいます。
収穫の1〜2ヶ月前から予約を取る形にすると、生産量の見通しも立ちますし、お客様にも待つ楽しみができます。予約のページは1枚あれば足りますし、毎年同じページを使い回せます。
写真と、育てている記録が売りものになります
スーパーに並ぶ野菜と何が違うのか。ネットで買う人は、そこにお金を払っています。
難しく考える必要はなく、畑の写真と、いつ何をしているかの記録で足ります。田植え、草取り、福井の冬に雪の下から掘り出す作業。スマホで撮った写真に一言添えるだけで、他と比べようのない情報になります。毎日でなくていいので、月に2〜3回、続けてください。
加えて、食べ方の提案は購入の後押しになります。保存方法、下ごしらえ、簡単なレシピ。「買ったあとどうするか」が見えると、初めての人が買いやすくなります。
繁忙期の発送を、どう乗り切るか
注文が集中するのは、収穫の最盛期です。そして、その時期は畑がいちばん忙しい。ここが噛み合わないと、発送が遅れて評価が下がります。
対策は3つあります。受注できる数に上限を設ける、発送日を週2日に固定して先に告知する、梱包だけを家族や近隣に手伝ってもらう体制を組む。どれも地味ですが、ここを設計しておくかどうかで、翌年も続けられるかが決まります。
注文が入りすぎて断ることになるのは、悪いことではありません。上限を先に書いておけば、お客様も納得されます。
もうひとつ、よくある失敗を挙げておきます。収穫期だけ更新して、あとの10ヶ月は止まってしまうことです。買う側から見ると、その店が今も続いているのか分かりません。冬の畑の様子や、来年の作付けの話でいいので、月に1回は何かを出しておいてください。
ふるさと納税をどう位置づけるか
福井県内の多くの市町がふるさと納税に力を入れています。生産者にとっては大きな販路ですが、手数料や自治体側の運用に左右される面もあります。
ふるさと納税で買ってくださった方に、同梱のチラシで自社サイトを案内する。翌年、その方が直接注文してくださる。この流れをつくっておくと、制度の変更に振り回されにくくなります。
補助金が使えることもあります
ネットショップの構築には、小規模事業者持続化補助金やふくいDX加速化補助金が使えるケースがあります。以前、ふくいDX加速化補助金を活用して、ECと受注の流れを一緒に整えた事業者さまがありました。注文を受けてから発送するまでの手作業が減り、売る側の負担がかなり軽くなりました。
ただし、要件も金額も年度によって変わりますので、必ず最新の公募要領をご確認ください。申請しても採択されないことがあります。弊社は企画書へのアドバイスまでは対応できますが、申請そのものは行政書士の業務です。必要であれば、知り合いの行政書士をご紹介します。
まとめ
順番は、既存のお客様への直送、次にプラットフォーム、最後に自社サイト。作る前に送料と梱包と手取りを決める。旬の短いものは予約販売で。福井の生産者にしか書けないことが、そのまま商品の価値になります。
何から手をつけるか、順番を決めるところからでも構いません。





