補助金のご相談を受けていて、時々ドキッとする瞬間があります。「補助金が出るなら、ホームページでも作っておこうかなと思って」という言葉を聞いたときです。
気持ちはすごくわかるんです。使える制度があるなら使いたいですよね。私たちも商工会連合会から専門家派遣の委嘱を受けていて、補助金の活用は積極的におすすめする立場です。
でも、順番が逆になると、だいたいうまくいかないんです。今日は「補助金ありき」で始まったWeb制作がつまずきやすいパターンを、制作会社の立場から正直にお話しします。これから申請を考えている方にこそ、読んでいただきたい内容です。
失敗パターン1:目的が「作ること」にすり替わる
本来、ホームページは「新しいお客様と出会う」「採用につなげる」といった目的のための手段です。ところが補助金が起点になると、いつの間にか「補助金の期限内に完成させること」自体が目的になってしまうことがあります。
すると何が起きるか。掲載する情報の整理や、お客様に何を伝えるかの議論が後回しになって、「とりあえず会社概要と事業内容を載せたサイト」が出来上がります。期限には間に合った、補助金ももらえた、でも問い合わせは来ない。これ、本当によくあるパターンなんです。
ホームページで成果を出すには、公開後の運用がむしろ本番です。私たちが関わった弁護士事務所のサイトでは、月2回の定例分析と改善を続けて、半年でPVが20倍になりました。作って終わりなら、この結果はなかったと思います。
失敗パターン2:後払いと不採択のリスクを見落とす
補助金には、構造的な注意点が2つあります。
- 補助金は後払い。制作費はいったん全額自分で支払う必要がある
- 申請しても採択されないことがある。採択は誰にも保証できない
「補助金が出るから」と手元資金ギリギリの計画を立ててしまうと、入金までの数ヶ月間、資金繰りが苦しくなります。また、不採択だった場合に「じゃあやめます」となるようなら、そもそもその投資は必要だったのか、考え直す機会かもしれません。
逆に言えば、「不採択でもやる。採択されたら負担が軽くなってありがたい」と思える計画なら、補助金はとても心強い味方になります。
失敗パターン3:スケジュールが補助金都合になる
補助金には公募期間、交付決定日、事業完了期限があります。この日程に合わせようとすると、本来じっくり時間をかけたい工程が圧縮されがちです。
たとえば、会社の強みを言葉にする作業。写真撮影の準備。原稿の確認。こういう工程を急がされたサイトは、どうしても内容が薄くなります。私たちの経験でも、老舗のダンススクール様とは8ヶ月かけてじっくり関係を築きながら形にしていきました。良いものには、それなりの時間がかかるんです。
また「交付決定前の発注は対象外」というルールがあるため、着手時期が制度に縛られる点も要注意です。繁忙期や商戦期に間に合わせたいなら、補助金のスケジュールと合わない可能性があります。
失敗パターン4:作った後のお金を考えていない
多くの補助金は「作る費用」は対象でも、その後の運用費・保守費・広告費は対象外か、対象でも期間限定です。ホームページはサーバー代・ドメイン代・更新の手間が毎年かかりますし、集客を本気でやるなら広告費や改善の費用も必要になります。
ちなみに広告については、紙のチラシに60万円かけるより、Web広告2万円以下で25名以上のお申し込みをいただけた事例もあります。作った後にどうお金と手間をかけるか。ここまで含めて計画するのが、補助金活用の本当のスタートラインだと思います。
「補助金で実質お得」という営業トークには冷静に
もうひとつだけ、老婆心ながら。補助金の公募時期になると、「補助金を使えば実質ほぼ負担なしで作れますよ」といった営業を受けることがあるかもしれません。制度の活用自体は良いことですが、判断の軸はあくまで「その投資が自社に必要かどうか」です。
採択は誰にも保証できませんし、後払いの立て替えは必ず発生します。また、補助金を前提に相場より高い金額設定になっていないか、見積もりの中身はきちんと確認してほしいところです。急かされたときほど、一晩置いて考える。商工会議所・商工会など第三者に相談してみる。それくらい慎重でちょうどいいと思います。
まとめ
補助金は素晴らしい制度ですが、「補助金があるから作る」という順番で始めると、目的のすり替え、資金繰りの誤算、スケジュールの歪み、運用費の見落としといった落とし穴にはまりやすくなります。
おすすめの順番はシンプルです。まず「何のためにWebに投資するのか」を決める。次に必要な内容と予算を見積もる。最後に、使える補助金がないか探す。この順番なら、補助金は最高の追い風になってくれます。
制度の詳細は変わりますので、最新の公募要領のご確認もお忘れなく。「うちの計画、この順番で考えられているかな?」と不安な方は、お気軽にご相談ください。補助金に関する他の記事もあわせてどうぞ。


